【第1章】タイの不動産業者の資格は不要
〜何も知らなくても今日から不動産エージェント〜

タイの不動産業界は、日本と比較すると極めて参入障壁が低い市場です。

結論から言うと、タイでは不動産仲介業を行うための特別な免許や国家資格は存在しません。

法人の場合は、会社の定款(事業目的)に「不動産売買」「賃貸仲介」などの記載があれば、基本的には許認可不要で事業が可能です。また、個人であっても同様に、不動産エージェントとして活動すること自体に制限はほとんどありません。

ただし、日本人を含む外国人がタイで不動産業に関わる場合は注意が必要です。
以下の条件を満たす必要があります。

  • 不動産業を事業目的に含む法人に所属すること
  • ビジネスビザの取得
  • ワークパーミット(労働許可証)の取得

これらの法的要件を満たしてしまえば、極端な話、物件情報と顧客さえあれば、すぐに不動産ビジネスが成立してしまう市場がタイです

なぜ「素人エージェント」が多いのか

この参入の容易さが、タイ不動産市場の大きな特徴であり、同時にリスクでもあります。

実際には、

  • 不動産の基本知識がない
  • 投資としての考え方を理解していない
  • 購入後の運用(リーシング)を想定していない

といったエージェントが多数存在しています。

近年ではYouTubeやSNSを活用して物件を販売するケースも増えており、特に新築プレビルド(未完成物件)の販売に特化したエージェントは

  • 完成後の賃貸戦略
  • 出口戦略(売却)
  • 実需と投資の違い

といった重要な視点を持たないまま販売しているケースも少なくありません。

極端な場合、「リーシング」という言葉自体を理解していないことすらあります。

あと、タイには賃貸管理という概念も少なく、そもそも現地に法人や現地スタッフなど存在しないと賃貸管理もままならないので、そういったエージェントから購入して引き渡し後に物件も投資家も迷子のような存在になることは、海外不動産あるある事情の一つです。

「リーシング」とは何か(最重要概念)

本講座において非常に重要なキーワードがリーシング(Leasing)です。
リーシングとは単なる「賃貸募集」ではありません。

物件を“収益商品”として成立させる一連の戦略・施策を指します。

具体的には以下の要素が含まれます

  • ターゲット入居者の設定(日本人・欧米人・タイ人など)
  • 適正賃料の設定(市場相場との比較)
  • 家具・家電のグレード設計(ターゲットに応じた最適化)
  • 室内の内装・演出(写真映え・内覧対策)
  • ポータルサイトへの掲載戦略
  • 現地エージェントへの情報共有・営業活動
  • 空室期間を短縮するための価格調整・施策

つまり、「買っただけでは不動産投資は成立しない」ということです。この視点が欠けていると、「購入したが貸せない」「想定利回りが出ない」といった事態に陥ります。

デベロッパーやセールスエージェントは物件を売るのことが仕事です。そのエージェントにリーシングを依頼しても販売時には耳触りのいいこと言いますが、リーシングはデベロッパーやセールスエージェントの業務&責任範囲外にて、当然責任は取りません。責任は購入したあなたであり、投資家として責任を負うものです。

海外不動産あるある話として、プレビルドの販売時(みなさんから見たら購入時)のセールス担当者が物件完成時にはすでに退職しており、購入した会社にいないということは日常茶飯事と思っておいたほうがいいでしょう。それだけ入れ替わりの激しい業界です。

したがって、長年タイで個人事業主レベルにて現地に根付いた不動産販売業者から購入した方が無難と私の経験からは思いますし、実際に弊社にお見えになるお客様にも「他の不動産業者をご存知でしょうか?」と聞かれたら、前述のような地元に根付いた不動産業者の名前をあげさせてもらってます。

「新築プレビルド」と「リセール(中古)」の違い
ここの業界の裏側を知っておこう

タイ不動産を理解するうえで、「新築プレビルド」と「リセール(中古)」の違いは非常に重要です。

● 新築プレビルドの特徴

  • デベロッパー主導で手続きが進む
  • 土地局での所有権移転も基本的に任せられる
  • エージェントへのコミッションが高い(一般的には6〜8%)

そのため、エージェント側にとっては
「売りやすく、利益も大きい」ビジネスモデルです。

一方で、

  • 完成後の市場競争
  • 同時期に大量供給されるリスク
  • 実際の賃貸需要とのズレ

といった点は軽視されがちです。

つまり、さほど知識がなくでもタイの不動産を販売することが可能の上に、コミッション比率が高いので、YouTubeやSNSサイト及び情報商材的に販売するエージェントはこちらにビジネスリソースを集中させる傾向があります。

● リセール(中古)物件の特徴

  • 売主との直接交渉が必要
  • 契約書作成・条件調整が発生
  • 土地局の予約・交渉・登記手続きを自社で対応
  • 売主・買主双方との調整業務

報酬は

  • 売主側からの手数料(ケースにより、1%〜2.5%)
  • 買主からの仲介手数料(一般的に 3%)

と、新築に比べると決して高くはありません。しかもそれに加えて

  • 法務知識
  • 交渉力
  • 実務経験

が求められます。言い換えると、日本の不動産仲介業+司法書士業務の一部を同時に担うようなイメージです。

リセール物件は、デベロッパーの新築プレミアムの価格の上乗せもなく、価値担保された優良不動産がたくさん存在しているのに、多くは紹介されずに地元ローカル業者がクローズドに従来(優良)顧客に紹介しているのが実態です。弊社でもやはり価値のわかる方に優先的に物件ご紹介して、即決していただくことが多いのが実情です。

「できる業者」と「できない業者」の見極め

リセール物件を扱い、土地局での所有権移転登記までワンストップで対応できる業者は、一定の実務能力を持っていると判断してよいでしょう。

しかし、ここで重要なのは、それでも「リーシングができる」とは限らないという点です。

タイ不動産では、

  • 売買はできる
  • でも貸せない
  • 運用設計ができない

という業者が少なくありません。

結果として、数百万円〜数千万円規模の投資を「実質的には素人」に近い相手から購入してしまうというケースが現実に起きています。

本講座では、そうしたリスクを回避するために

  • 正しい不動産の見方
  • 投資としての考え方
  • 実務に基づいた判断基準

を体系的に解説していきます。最後まで理解していただければ

  • 不適切な物件を掴まされるリスクを回避できる
  • エージェントの説明の真偽を見抜ける
  • 自身で投資判断ができる

だけでなく、あなた自身がタイ不動産のセールスエージェントとして活動できるレベルに到達することも十分に可能です。タイ不動産市場は、「情報格差」がそのままリスクとリターンに直結する世界です。

まずはこの講座で、その構造を正しく理解することから始めていきましょう。