前章では出口戦略より入口戦略重視、そして物件購入後もキャッシュアウトしないことの重要性を述べました。
それではキャッシュアウトしないためにも物件購入後の維持管理(メンテナンス)=リフォーム・リノベーション(以降、「リノベーション」にて記載統一します)について、この章では触れていきたいと思います。
「リノベーション」は購入後の失敗が非常に多いテーマです。「日本との違い」と「予算感」を中心に見ていきましょう。
知っておきたい日本とタイでの違い
タイのコンドミニアムは築20〜30年程度でも十分に住める物件が多く、購入後にリノベーションして価値を上げる投資手法が一般的です。
ただし、日本と同じ感覚でリノベーションを考えると失敗するケースも少なくありません。まずは知っておくべき日本とタイでの違いを挙げてみます。
1)「費用は日本より安い」は勘違い
安いのは工賃(人件費)のみで、施工に必要な材料費は日本と大差はなく、むしろ品質を考慮したら日本の方が安価に感じるアイテムがたくさんあります。
2)職人のスキルに個人差が大きい
タイでは職人(タイ語でチャーンと言います)の育成制度が日本ほど体系化されておらず、どこかで見習い修行を積んだ職人ではなく、見よう見まねで技術を習得しているケースも珍しくありません。そのため施工品質には大きな個人差があります。
また、仕上がりの美しさや細部の納まりなどの精度に対する感覚も日本とは異なるため、日本人の基準で見ると仕上げが粗く感じられることもあります。完成後の見た目や品質にはかなりの差があると認識しておくとよいでしょう。
3)管理組合のルールが厳しい
工事前には管理組合法人(Juristic office)への申請と許可が必要となります。
主な提出物は、
- 工事申請書
- 作業者リスト
- パスポートコピー
- 保証金(デポジット)
になります。
特に作業時間については日本人の想像以上に管理組合のルールが厳しく、朝は9時や10時以降、17時までの時間厳守、土日の施工不可は当たり前です。
物件にもよりますがパタヤのような観光地では、観光ハイシーズン(11月から2月)は施工禁止の物件もあります。
工程には余裕を持っておきましょう。
4)水回り移設は基本的に難しい
フルリノベーションと言っても、キッチンや浴室などの水回りは基本的に動かせないと認識して、設備設計を組みましょう。次項でその理由もあわせて詳しく解説します。
5)将来の売却を考慮して設計の必要がある
日本人がタイで不動産を購入してもそこが終の住処になるのはほんの一握りの方だと思います。
タイでは「自分好み」より「誰でも住みやすい」が重要です。
おすすめは、白系、グレー系、木目系のシンプルな色味とデザインにまとめること。逆に避けるべきは派手な色、特殊な造作、日本独特の間取り変更です。
物件のバリューアップを目指し、出口戦略を優位に進めるためのリノベーションを心がけましょう。
プランニングにおける日本とタイでの違い
日本とタイでは主に気候や施工品質が違うという理由から、プランニングや材料選びの面でも日本とは異なる視点が求められます。
1)水回りは基本的に移動できない
日本で住宅のリノベーションといえば希望にあわせて水回りを自在に配置させることもできますが、タイのコンドミニアムではトイレ、シャワー、洗面台、キッチン(シンク)の大幅移設は基本的に推奨されません。
主な理由は
- 排水勾配の確保が難しい
- 排水管の規格が細い
といったためです。
日本人オーナーから最も要望が多いのがキッチンの移設ですが、アイランドキッチンのように既存の位置から大幅に移設するためには、配管を延長したり、建物のメインの排水管まで傾斜をつけて勾配を確保する必要があります。
ところがタイのコンドミニアムは日本と違い直床(コンクリートの躯体に直接床が貼ってある作り)である場合がほとんどで、勾配をつけるためには部屋の一部もしくは部屋全体を床上げして配管スペースを確保する必要があります。
また、床排水の管径の規格が日本よりも細く40mm程度しかないケースが多く、また前項で述べたように施工品質も日本よりも劣るために、配管の延長は排水不良の原因になり、悪臭や水漏れが発生しやすくなります。
実際に配管の詰まりが原因で水漏れすると、階下への水漏れによるクレーム対応や床を剥がすなど大掛かりな修繕が必要になるケースもあります。
そのため、管理組合への事前申請段階でNGが出る場合も少なくありません。
弊社でおすすめしているプランは、既存位置を活かし、天板の交換やキャビネットの交換、水栓の交換で仕上げることです。
タイでは天板やキャビネットの大きさや色、素材、またシンクや水栓、コンロといった設備品も豊富な品揃えの中からお好みで組み合わせることができる、日本のシステムキッチンにも近いユニットキッチンとしてセミオーダーすることができます。










2)内装はクロス(壁紙)貼りより塗装仕上げ
日本の住宅の場合、内装はクロス仕上げが一般的ですが、タイではあまりおすすめできません。塗装仕上げの方が一般的となります。
理由はいくつかありますが、主にはタイの気候や建物の構造の面でクロス仕上げはデメリットが多く、塗装仕上げのほうが合理的だからです。
① 湿気が多い
タイの雨季は長く1年の半分程度、湿度は80%を超えます。そのためクロスの場合には剥がれやカビ、浮きといったダメージが発生しやすくなります。
② 施工品質が安定しない
日本の住宅の場合には内壁下地は石膏ボードの場合が多いため、施工効率を考えクロス仕上げが一般的なのですが、タイの場合はRC造が多くコンクリート壁に直接パテ+塗装できるため、塗装仕上げが合理的かつ一般的です。そのため日本と比較してクロス職人が圧倒的に少なく、日本品質を期待すると失敗しやすいです。
③ 将来の補修が面倒
上記理由から材料も販路が限られており、部分補修など発生した場合には同一品番の材料が入手困難となり色味が合わなくなります。
塗料はさまざまなメーカーのものが入手できますが、弊社ではTOA、Beger、Nippon Paintといった塗料メーカーの高品質塗料を使用する方が長持ちしますのでおすすめしています。






3)気候やメンテナンス性を考慮した床材選び
タイでは既存の床材はタイル仕上げが一般的となりますが、最も安価な方法ではあるものの、経年により割れや目地の汚れが目立ってたびたび補修が必要になることから、弊社ではSPCフローリングをおすすめしています。
SPCフローリング(Stone Plastic Composite)とは、ストーンパウダー(炭酸カルシウム)を配合したフロアパネルで、耐久性や耐水性に優れているだけでなく、シロアリにも強く低コスト、さらには施工性にも優れているのが特徴です。
性能だけでなく、お部屋の雰囲気をガラリと変えることができますので、他の物件との差別化にもなります。
一方で、無垢材や合板フローリングはタイの高温多湿な気候の影響を受けやすく、反りや膨張のリスクがありますし、シロアリ発生の恐れもあります。また、カーペットも汚れや湿気がこもりやすく、メンテナンス性の面からあまりおすすめできません。



4)エアコン交換は費用対効果が高い
築10年以上の物件では古いエアコンが残っていることもありますが、新しいエアコンに取り替えることで、電気代削減効果が高く、賃貸競争力も向上しますので、早めの交換がおすすめです。
交換費用の目安は以下の通りです。
- 9,000BTU=15㎡(9-10畳):15,000〜20,000バーツ
- 12,000BTU=20㎡(12-13畳):18,000〜25,000バーツ
また、常夏のタイではエアコンは年中フル稼働しますので、フィルター清掃、エアコン本体清掃、エアコンガスの挿入などのメンテナンスは頻繁に行った方がベターです。
リノベーションにかかる費用はどのくらい?
気になるタイでのリノベーション費用のざっくりとした目安は下記の通りです。
ライト
リノベーション
【内容】
塗装
照明交換
家具交換
カーテン交換
【費用目安】
30㎡:15〜25万THB
50㎡:25〜40万THB
㎡=5,000〜8,000THB
ミドル
リノベーション
【内容】
キッチン交換
洗面台交換
床張替え
エアコン交換
【費用目安】
30㎡:20〜45万THB
50㎡:40〜65万THB
㎡=10,000〜15,000THB
フル
リノベーション
【内容】
間取り変更
全家具造作
水回り全面交換
内装全面刷新
【費用目安】
30㎡:50〜70万THB
50㎡:80〜120万THB
㎡=16,000〜25,000THB
既存の状態や、採用する設備のグレードにより価格は変わりますが、上記が大まかな目安としてお考えください。高級物件では200万バーツ以上になることもあります。
ごの章のまとめ
タイのリノベーション成功のポイントをまとめると以下の通りとなります。
- タイの施工品質や気候風土を考慮してプランニングする
- Juristicルール、許可を確認する
- デザイン性以上にメンテナンス性を考慮し無駄なキャッシュアウトを防ぐ
- 将来の売却(出口戦略)を前提に考える
弊社が考えるリノベーションは「お金をかけること」ではなく「売りやすくすること」です。
優先順位としては
- 水漏れ対策
- エアコン交換
- キッチン・浴室改善
- 床材更新
- 家具更新
- 照明変更
- 壁塗装
この順番で行うと費用対効果が高くなります。
どうしても「住みたい部屋」を作りたくなりますが、「借りたい・買いたい部屋」を作ることが、出口戦略を優位にして、タイ不動産投資成功の近道となります。





