【第10章】「売れない時代」に、何を買うべきか
〜2026年以降のタイ不動産を見極めるための実践戦略:前編〜

第9章では、2026年現在のタイ不動産市場において、なぜ住宅が売れにくくなっているのかを解説しました。

現在のタイでは、完成在庫の増加、住宅ローン審査の厳格化、家計債務の高止まり、中間所得層の購買力低下、そして中国人を中心とする外国人投資家の変化が同時に起きています。

タイ中央銀行の資料によると、家計債務残高のGDP比は2025年第2四半期時点でも86.8%に達していました。以前より低下しているとはいえ、依然として非常に高い水準です。債務残高の減少というより、銀行や金融会社が新たな融資に慎重になった結果、借入れの伸びが抑えられている側面もあります。

住宅ローンについても、すべての価格帯で一律に70%が否決されるわけではありませんが、300万バーツ以下の低価格帯住宅では、申込者の約70%が融資を受けられないという指摘があります。特に中間所得層、低所得層、既存債務を抱える購入者にとって、住宅ローンの壁は非常に高くなっています。タイ中央銀行は2025年、低迷する不動産市場を支援するため、一時的にLTV規制(*)を緩和し、一定期間、住宅価格の100%まで融資できる制度を導入しました。

*LTV(Loan to Value)住宅担保融資比率。「融資額 ÷ 担保評価額」の比率

しかし、LTV規制が緩和されたからといって、返済能力の低い人に銀行が融資するわけではありません。制度上は100%融資が可能であっても、借り手の収入、勤務先、既存債務、信用履歴などの審査は残ります。

この政策についてタイ中央銀行自身も、不動産市場の供給過剰を緩和する効果は期待できるものの、経済全体を大きく押し上げる効果は限定的との見方を示していました

つまり、現在のタイ不動産市場は、単純に金利を下げたり、融資枠を広げたりするだけでは解決しない、構造的な問題を抱えているということです。では、このような市場で私たちは何をすればよいのでしょうか。

答えは、タイ不動産市場全体が回復するのを待つことではありません。

これから必要なのは、市場が良くても悪くても、収益と資産価値を維持できる物件を見極めることです。

本章では、2026年以降のタイ不動産投資において、何を買うべきか、何を避けるべきか、そしてバンコクとパタヤをどのように見極めるべきかを解説していきます。

「タイ不動産市場」という一つの市場は存在しない

タイ不動産を考える際、多くの人が

「今、タイの不動産は上がっていますか」
「バンコクの不動産は買い時ですか」
「パタヤのコンドミニアムは値上がりしますか」

という質問をします。

しかし、実際には「タイ不動産市場」という一つの市場が存在するわけではありません。

タイ国内でも、

  • バンコク中心部
  • バンコク郊外
  • パタヤ
  • シラチャ
  • プーケット
  • チェンマイ
  • 工業団地周辺
  • 地方都市

とエリアや立地で購入者、入居者、価格帯、賃貸需要、売却市場がまったく異なります。

さらに、同じバンコクであっても、スクンビットの日本人駐在員向け物件と郊外のタイ人実需向け物件では市場構造が異なりますし、パタヤでも

  • ウォンアマットの高級コンドミニアム
  • セントラルパタヤの観光・短期滞在向け物件
  • ジョムティエンの中長期滞在向け物件
  • プラタムナックの小規模物件
  • ナジョムティエンのリゾート型物件

とエリアや物件種別によっても、買主候補も賃借人も異なります。

したがって、「タイ不動産が良いか悪いか」ではなく、その物件が属する小さな市場に、誰が住み、誰が借り、誰が買うのかを考える必要があります。

不動産投資では、国全体の経済指標よりも、対象物件から半径1km、3km、5km以内の需給関係の方が、実際の収益に大きく影響することがあります。

2026年の市場は「二極化」が進んでいる

2026年のタイ不動産市場を一言で表すならば、全面的な下落というよりも、二極化の進行です。売れない物件は、値下げしてもなかなか売れません。

一方で、条件の良い物件には、依然として買主や入居者が集まっています。

現在、市場で比較的評価されやすいのは、次のような物件です。

  • 実際の賃貸需要が確認できる
  • 完成済みで現物を確認できる
  • 駅、職場、商業施設、観光施設へのアクセスが良い
  • 管理状態が良好である
  • 競合物件より価格が割安である
  • 外国人名義で登記できる
  • 室内状態が良く、追加投資が少ない
  • 売却時の買主候補が複数存在する
  • 月々の維持費が過度に高くない

反対に、売却が難しくなりやすいのは、次のような物件です。

  • 周辺に同じような物件が大量にある
  • 購入価格だけが高く、家賃が伴っていない
  • 駅や中心地から遠い
  • 管理が悪く、共用部が劣化している
  • 管理組合の資金が不足している
  • 空室が多い
  • デベロッパーの売れ残り住戸が大量に残っている
  • タイ人にも外国人にも売りにくい
  • 賃貸需要をAirbnbだけに依存している
  • 将来のインフラ計画だけを根拠に販売されている

市場全体が上昇していた時代には、立地や管理状態に多少問題があっても、周辺価格の上昇によって売却できる可能性がありました。

しかし、市場全体の成長が鈍化すると、物件ごとの差がそのまま価格と流動性の差になります。これからは、優良物件とそうでない物件の差が、さらに大きくなっていくでしょう。

「新築だから安全」とは限らない

タイ不動産を初めて購入する人は、新築物件に安心感を持つ傾向があります。

確かに新築物件には、

  • 建物や設備が新しい
  • 室内修繕が少ない
  • デベロッパーの販売保証がある
  • 共用施設が充実している
  • 購入手続きが分かりやすい

といったメリットがあります。

しかし、投資として考えた場合、新築だから安全とは限りません。

新築物件の販売価格には、建設費や土地代だけでなく、

  • 広告宣伝費
  • モデルルーム費用
  • 販売代理店への手数料
  • 家具キャンペーン
  • 無料特典
  • デベロッパーの利益
  • 将来への期待価格

などが含まれています。

そのため、新築販売価格と、実際の中古市場で売却できる価格との間に、大きな差が生じることがあります。

例えば、新築価格が600万バーツであっても、完成後に周辺の中古物件が450万バーツから500万バーツで取引されていれば、その物件の実質的な市場価値は600万バーツとは限りません。

購入者は600万バーツで買ったとしても、売却時には中古物件として周辺相場と比較されます。特にデベロッパーが売れ残り住戸を保有している場合、個人所有者はデベロッパーと競争しなければなりません。

デベロッパーは、

  • 登記費用無料
  • 家具付き
  • 頭金割引
  • 低金利キャンペーン
  • 数年間の共益費無料
  • 賃料保証

などを付けて販売できます。

個人が同じ建物の一室を売却する場合、こうした特典に対抗するため、さらに価格を下げなければならない可能性があります。

したがって、新築物件を購入する際には、販売価格だけを見るのではなく、完成後に中古物件となった時、いくらで売れるかという視点が必要です。

今後は完成済み中古物件が有利になる

2026年以降の市場では、完成済みの中古物件に投資機会が増えると考えています。

中古物件には、

  • 現在の建物状態を確認できる
  • 実際の管理状況を確認できる
  • 現在の入居率を確認できる
  • 実際の家賃相場を確認できる
  • 周辺の売買事例と比較できる
  • 完成遅延のリスクがない
  • すぐに賃貸運用を始められる

というメリットがあります。

特に重要なのは、数字ではなく現実を確認できることです。

プレビルド物件では、将来の家賃、将来の眺望、将来の周辺環境、将来の売却価格など、多くの部分が予測に基づいています。

一方、完成済み物件では、

  • 実際に何バーツで貸せるのか
  • どのような入居者が住んでいるのか
  • 何室が売りに出ているのか
  • エレベーターやプールが正常に管理されているか
  • 建物に漏水やひび割れがないか
  • 管理組合が正常に機能しているか

を確認できます。

市場が不透明な時ほど、「将来こうなるだろう」という予測よりも、「現在どうなっているか」という事実を重視すべきです。

ただし、中古物件であれば何でもよいわけではありません。古い物件では、配管、防水、エレベーター、空調、外壁、プールなどに大規模な修繕が必要になる可能性があります。修繕積立金が不足している物件では、所有者に一時金が請求されることもあります。

したがって、中古物件を購入する際には、室内だけでなく、建物全体の管理状態と管理組合の財務状態を確認する必要があります。

バンコク市場をどう見るべきか?

バンコク全体が一律に悪いわけではありません。

バンコクの住宅市場では、低価格帯を中心に住宅ローンの否決率が高く、デベロッパーは新規供給を抑えながら、既存在庫の販売を優先しています。

2025年のバンコク首都圏では、特に300万バーツ以下のマスマーケット向け住宅が、家計債務と融資審査の影響を強く受けました。デベロッパー各社も、低価格帯の新規開発を減らし、在庫処分や高所得者向け物件に軸足を移す動きがみられました。

また、2024年第4四半期の平均的な住宅ローン否決率は約40%、2025年第1四半期には45%へ上昇したとの業界報道もあります。

在庫の月間消化率は約2%にとどまり、当時の販売速度が続けば、残存在庫の販売に4年以上かかるという試算も示されていました。

ただし、バンコク全体が同じ状況ではありません。

タイ人の住宅ローンに依存する郊外のマスマーケットと、富裕層、外国人、駐在員が利用する都心部の市場は、分けて考える必要があります。

バンコクで重視すべき3つの需要

バンコクで物件を選ぶ際には、次の三つの需要を確認します。

① タイ人の実需

タイ人が自分で住むために購入する需要です。実需がある物件は、投資家需要だけに依存しないため、比較的安定しています。ただし、タイ人実需向け物件の場合、購入者の多くが住宅ローンを利用します。したがって、売却価格が高すぎると、買主がローン審査に通らない可能性があります。外国人が現金で購入できる価格であっても、タイ人の給与水準と住宅ローン審査から見れば、購入が難しいことがあります。

② 外国人駐在員の賃貸需要

スクンビット、シーロム、サトーン、ラマ9世など、一部のエリアでは外国人駐在員による賃貸需要があります。
日本人駐在員向けの場合

  • 通勤先へのアクセス
  • 日本人学校の送迎
  • 日系スーパー
  • 病院
  • 飲食店
  • 部屋の広さ
  • 浴槽
  • 管理対応

などが重要です。

駅徒歩だけでなく、実際の生活動線が物件の稼働率を左右します。日本人が多いエリアだからといって、すべての物件に日本人需要があるわけではありません。単身者向け、夫婦向け、家族向けでは、求められる面積や設備が異なります。

③ タイ人富裕層と外国人投資家の購入需要

都心部の高級物件では、住宅ローンに依存しない富裕層や外国人が主要な買主になる場合があります。

この市場は低価格帯より融資問題の影響を受けにくい一方で、購入者の目が厳しく、物件間の競争も激しくなります。

有名デベロッパーだから売れる、駅前だから売れるという単純な市場ではありません。眺望、階数、間取り、天井高、駐車場、プライバシー、管理品質、建物のブランド力まで比較されます。

バンコクで避けたい物件

バンコクで特に注意したいのは、次のような物件です。

  • 駅から遠い小型コンドミニアム
  • 同一エリアに同タイプの物件が大量供給されている
  • 20平方メートル前後で実生活に不向き
  • 家賃に対して販売価格が高すぎる
  • 完成在庫が大量に残っている
  • 共益費が高いのに管理品質が低い
  • 賃借人が短期間で頻繁に入れ替わる
  • タイ人にも外国人にも特徴を説明しにくい
  • 将来の鉄道計画だけを販売根拠としている

特に「駅ができれば値上がりする」という説明だけで郊外物件を購入することには注意が必要です。

鉄道が開通しても、その地域に雇用、商業施設、学校、病院、賃貸需要がなければ、不動産価値が大きく上昇するとは限りません。

パタヤ市場をどう見るべきか?

パタヤの不動産市場は、バンコクと大きく異なります。

バンコクが仕事、通勤、学校、日常生活を目的とする需要が中心であるのに対して、パタヤでは

  • 外国人のセカンドハウス
  • 退職後の長期滞在
  • 観光
  • 短期賃貸
  • 長期休暇
  • 資産分散
  • 海の見える住宅への需要

などが市場を支えています。

そのため、タイ国内の住宅ローン市場が厳しくても、外国人が現金で購入する物件には一定の需要が残ります。

2025年通年の外国人によるタイ国内のコンドミニアム移転登記は、戸数では前年比2.2%増の1万4,899戸でしたが、総額は10.7%減の約609億バーツとなりました。

これは外国人需要が完全に消えたわけではない一方、購入価格がより低い物件へ移っていることを示しています。

外国人による購入は、依然としてバンコク、チョンブリ、プーケットに集中しています。パタヤを含むチョンブリ県は、外国人コンドミニアム市場において、引き続き重要な地域です。しかし、外国人需要があるからといって、パタヤのすべての物件が売れるわけではありません。パタヤは供給量が多く、似たような物件が多数存在します。

物件を買うことは比較的簡単でも、希望価格で売却することは簡単ではありません。

パタヤでは「海が見える」だけでは足りない

パタヤでは、オーシャンビューが大きな販売要素となります。しかし、海が見えるというだけで資産価値が維持されるわけではありません。

確認すべきなのは、

  • 将来、前面に建物が建つ可能性
  • 海まで実際に歩けるか
  • 中心部へのアクセス
  • 周辺の飲食店やスーパー
  • 建物の管理状態
  • 外国人名義枠の残り
  • 賃貸運用の制限
  • 同じ建物内の売却在庫
  • 同じ間取りの競合数

です。

海が見えても、周辺に生活施設がなく、車やバイクがなければ生活できない物件は、長期賃貸の対象者が限定されます。

逆に、海の眺望が限定的でも、セントラルパタヤ、ターミナル21、ビーチロード、ソンテウ路線などにアクセスしやすい物件は、賃貸と売却の両面で需要を確保しやすい場合があります。

パタヤで有望な物件の条件

パタヤで比較的競争力を持ちやすい物件は、次のようなものです。

  • セントラルパタヤやビーチへのアクセスが良い
  • 外国人名義で購入できる
  • 高層階または眺望に明確な強みがある
  • 室内が適切に改装されている
  • 建物管理が良い
  • 日常生活に必要な施設が近い
  • 短期だけでなく長期賃貸にも対応できる
  • 同建物内の販売在庫が少ない
  • 購入価格が過去の新築価格ではなく現在の中古相場に合っている

特にパタヤでは、購入後の室内改装が収益と売却価格に大きく影響します。

築年数が経過した物件でも、

  • 照明
  • キッチン
  • 浴室
  • 家具
  • カーテン
  • エアコン

などを適切に更新することで、周辺の未改装物件との差別化が可能です。ただし、改装費をかければ必ずその金額以上で売却できるわけではありません。改装は、販売価格を上げるというより、空室期間や売却期間を短くするための投資と考えるべきです。

Airbnbだけを前提に購入しない

パタヤでは、短期賃貸による高い収益を期待して物件を購入する人も多くいます。

しかし、短期賃貸には、

  • 建物の管理規約
  • ホテル営業に関する法令
  • 管理組合との関係
  • 鍵の受け渡し
  • 清掃管理
  • 電気代・水道代
  • 予約サイトの手数料
  • 閑散期
  • 室内破損
  • 近隣住民からの苦情

などのリスクがあります。

短期賃貸がうまくいっている間は高い売上が得られても、管理規約の変更や行政対応により、突然運用できなくなる可能性があります。

したがって、パタヤで購入する物件は、短期賃貸ができなくなったとしても、長期賃貸または自己利用で成立するかを確認すべきです。Airbnb収入は上振れ要素であり、投資計画の最低ラインは長期賃貸収入で計算する方が安全です

タイのデベロッパーは危ないのか

現在、タイのデベロッパーについて、

「経営破綻する会社が増えるのではないか」
「大手デベロッパーであれば安全なのか」

という懸念が高まっています。

結論から言えば、すべてのデベロッパーが危険なわけではありません。
しかし、会社名だけで安全性を判断できる時代ではなくなっています。

デベロッパーの経営は、物件の売れ行きだけでなく、

  • 土地取得費
  • 建設費
  • 金融機関からの借入金
  • 社債の返済
  • 完成在庫
  • 新規プロジェクトへの投資
  • 金利負担
  • キャッシュフロー

によって決まります。

不動産開発会社は、物件を完成させただけでは利益を確定できません。購入者へ引き渡し、残代金を受け取って初めて、十分な現金を回収できます。販売予約が多くても、住宅ローンが否決されて引き渡しができなければ、売上と現金回収につながりません。

さらに、借入比率の高いデベロッパーは、社債や借入金の返済期限が来ると、在庫を値下げしてでも現金化する必要が生じます。

タイのコンドミニアム市場を分析した研究でも、借入比率が高く、債務の借り換えリスクを抱える上場デベロッパーほど、在庫を割安で販売する傾向があり、その値下げが同じ建物内の中古価格にも波及する可能性が示されています。

大手だから安全とは限らない

大手上場企業には、一般的に次のような強みがあります。

  • 銀行から資金を調達しやすい
  • 社債を発行できる
  • ブランド力がある
  • 複数のプロジェクトを持っている
  • 土地資産を保有している
  • 販売網が広い

一方で、社債による資金調達が多い会社では、決められた期日に元本を返済しなければなりません。銀行借入れであれば、銀行との協議によって返済条件を変更できる場合があります。しかし、社債は多数の投資家が保有しているため、条件変更が容易ではありません。

したがって、大手上場会社であっても、

  • 有利子負債
  • 社債償還予定
  • 完成在庫
  • 営業キャッシュフロー
  • 新規プロジェクト数
  • 過去の引き渡し実績

を確認する必要があります。

未完成物件ではデベロッパーリスクが大きい

プレビルド物件では、購入者が建物の完成前から頭金や分割金を支払います。
その間にデベロッパーの経営が悪化すると、

  • 工事が遅れる
  • 建設が停止する
  • 設計や仕様が変更される
  • 完成しても品質が低下する
  • 引き渡しが長期間遅れる

可能性があります。

契約上、返金請求が可能であっても、会社に資金がなければ、実際の回収には時間がかかります。

したがって、市場環境が不安定な時期には、未完成物件を購入する場合のリスクを、完成済み物件より高く見積もる必要があります。

デベロッパーを確認する7つのポイント

プレビルド物件を購入する場合には、少なくとも次の7点を確認します。

① 過去の完成実績
これまでに何件のプロジェクトを完成させているかを確認します。過去の物件についても、

  • 完成時期
  • 遅延の有無
  • 建築品質
  • 引き渡し後の管理
  • 購入者からの評価

を調べます。

② 建設許可と環境影響評価
建設許可や環境影響評価、いわゆるEIAが必要なプロジェクトでは、その承認状況を確認します。
販売が開始されていても、すべての許可が完了しているとは限りません。

③ 土地の権利関係
建設予定地をデベロッパーが所有しているか、抵当権が設定されているかを確認します。
土地やプロジェクト全体が金融機関の担保となっている場合には、購入する部屋について、引き渡し時に抵当権を解除できる仕組みが必要です。

④ 建設工事の進捗
パンフレットや営業担当者の説明だけでなく、実際の建設現場を確認します。
工事が長期間止まっていないか、予定された進捗と比較して遅れていないかを見ます。

⑤ 販売率ではなく引き渡し率
「販売率80%」と表示されていても、それが法的拘束力の弱い予約を含む可能性があります。

重要なのは、過去の完成物件で、実際に何%が引き渡されたかです。予約数が多くても、ローン否決や外国人購入者のキャンセルによって引き渡しに至らないことがあります。

⑥ 財務状態
上場会社であれば、決算書から次の項目を確認できます。

  • 現金残高
  • 有利子負債
  • 短期借入金
  • 社債償還予定
  • 完成在庫
  • 営業キャッシュフロー
  • 売上高
  • 純利益
  • 負債資本比率

利益が出ていても、営業キャッシュフローが継続的にマイナスの場合には注意が必要です。会計上の利益と、実際に保有している現金は同じではありません。

⑦ 契約内容
契約書では、

  • 完成予定日
  • 遅延時の補償
  • 仕様変更
  • 面積の変更
  • 契約解除
  • 返金条件
  • 名義変更
  • 外国人枠
  • 登記費用
  • 修繕責任

を確認します。

営業担当者の口頭説明ではなく、契約書に記載されている内容が基準となります。

後編へ続きます。