物件の購入、リノベーションが完了したら、次はいよいよ賃貸募集です。
どれだけ良いと思う物件を購入しても、テナント(入居者)が決まらなければ収益は発生しません。
タイ不動産投資においては「どの物件を買うか」と同じくらい「どのように貸すか」が重要になります。
この章では、タイの賃貸市場を理解して、より早く収益を生む物件にしましょう。
テナント募集はエージェントが主役
日本では「SUUMO」や「HOME’S」などのポータルサイトから直接問い合わせが入ることもありますが、タイでは若干事情が異なります。
ポータルサイトからの流入も一部ありますが、タイの賃貸市場では、アナログ的にローカルのエージェント(仲介業者)がテナントを連れてくるパターンの方が多いです。
つまり、
- どのエージェントが紹介するか
- どの程度紹介しやすい物件か
が、成約スピードに大きく影響します。
家賃設定より重要な「エージェントコミッション」
エージェントには賃貸仲介成約の報酬として仲介手数料(コミッション)を支払います。
日本では賃貸仲介手数料は家賃1か月分+消費税と法律で上限が決められていますが、タイでは明確な法定上限はなく、商慣習によって決まるのが一般的です。
また、日本では借主が支払うのが一般的ですが、タイではオーナー(貸主)がエージェントに支払うケースが最も一般的です。
商慣習的には1年契約で家賃の1ヶ月から高くて2ヶ月程度が相場となります。
なるべく低く抑えたいと考えてしまいがちなこのコストですが、例えば相場家賃が20,000バーツの物件があったとします。
オーナーA
家賃:
20,000
コミッション:
1ヶ月
オーナーB
家賃:
22,000
コミッション:
1.5ヶ月
この場合、多くのエージェントはオーナーBの物件を優先的に紹介します。理由は単純で、成約時の報酬が大きいためです。
タイでは、「家賃設定」以上に「エージェントに紹介してもらいやすい条件」が重要になるケースが少なくありません。したがって、物件の競争力次第なところもありますが、あえて少し高めに設定して、エージェントコミッションを1.5ヶ月や2ヶ月にすると決まりやすくなります。
オーナーA
年間家賃収入:
240,000
コミッション額:
20,000
実収入(家賃売上):
220,000
オーナーB
年間家賃収入:
264,000
コミッション額:
30,000
実収入(家賃売上):
234,000
このようにオーナーBの方が、実収入(家賃売上)は多くなりますし、エージェントからも選ばれる物件となります。
更新時のコミッションの重要性
タイでは一般的に賃貸借契約期間は1年です。契約更新時にもエージェントコミッションが発生するケースの方が多く、更新コミッションを支払いしない(支払いを渋る)と下記のアクションをするエージェントが存在します。
例えば、
- 他物件への引っ越しを勧める(同じ物件内でもこのようなことが行われます)
- 同居人名義へ変更して、実質的には同じ入居者なのに新規契約扱いにする
などのケースです。
そして、その物件が空室になっても次回以降、更新コミッションが出ない物件なので、新規テナントの紹介はしなくなり、いつまで経っても空室が埋まらない…、という日本人オーナーの物件はバンコクにもパタヤに多々あります。弊社も仲介の立場だと更新コミッションが確実にいただける物件を優先的に紹介します。そこはビジネスとしてご理解いただきたいところです。
もちろん全てのエージェントがそうではありませんが、ご自身が物件オーナーになった際は家賃設定も重要ですが、実際にテナント(オーナーにとってはお客様)を連れてきてくれるエージェントのコミッションの重要性を理解しておく必要があります。
本当のところのお客様は(コミッションを支払う相手ではありながら)賃貸仲介のエージェントなのかもしれません。
日本人オーナーが驚く入居者の部屋の使い方
タイ・バンコクやパタヤに居住する人種はかなり多国籍です。
タイ人はもちろんのこと、欧米人、中国人、インド人、ロシア人、中東系など様々な国籍の方が入居します。
そして文化の違いからか、どうしても「衛生観念」や「設備の扱い方」に大きな違いがあります。
日本人感覚では丁寧に使う室内設備・備品も、海外ではかなりラフに使われることがあります。
退去後には、
- 壁の汚れ
- 家具の傷
- ソファーの破損
- マットレスの汚れ
- キッチンの油汚れ
などが発生することも珍しくありません。
そのため、タイの賃貸経営では原状回復費用をある程度見込んでおく必要があります。余程の損傷や、経年劣化とは言い難い箇所以外はオーナーに負担になりがちです。
弊社でも何度も悲惨なユニットの現場に立ち会っておりますが「どういう使い方をしたらこの家具が壊れるのか?」といった不思議なことはたまにあります。
おおかたそのような属性(国籍)は理解しておりますので、デポジットの追加請求するなどして、最悪被害にあった際の担保を取れるようには努力します。
なお、パタヤのような街だと、急に入居者が失踪したりなど、なかなかハードな賃貸経営もたまにはあり、“アメージング・タイランド”と言わざるを得ないこともありますので、その際は誠に心苦しいのですが事故だったとご理解いただくしかございません。
Airbnb問題は日常的に起こる
日本でも民泊ゲストによるトラブルがニュースで取り上げられることがありますが、タイのバンコクやパタヤなどの観光地では、Airbnb利用はより身近な存在です。オーナーが長期賃貸契約をしたつもりでも、入居者が無断でAirbnb運営を行うケースがあります。
結果として、
- 近隣住民からの苦情
- 管理組合からの警告
- エレベーターや共用部の利用問題
などに発展する場合があります。特に観光地エリアでは注意が必要です。
タイでは家具家電付きが基本
日本と最も異なるポイントの一つです。
タイのコンドミニアムは基本的に「家具家電付き」で貸し出します。つまり、オーナー側が準備するものが非常に多くなります。
基本家具
ベッド
マットレス
ソファー
ダイニングテーブル
ダイニングチェア
リビングテーブル
収納家具
基本家電
テレビ
冷蔵庫
洗濯機
電子レンジ
電気ケトル
その他備品
カーテン
照明
鏡
絵画
装飾品
これらが揃って初めて競争力のある賃貸物件になります。
したがって、これらが経年劣化による故障、損傷は全てオーナー負担となりますので、あらかじめランニングコストに見込む必要があります。
バンコク中心部の日系駐在員向け物件では、さらに高い設備レベルが求められます。
代表例として、
- 洗浄便座(ウォシュレット)
- 浄水器
- ウォーターサーバー
- 大型冷蔵庫
- 高性能エアコン
などがあります。賃料が高い物件ほど、こうした設備投資が求められる傾向があります。
大家業は思った以上に手間がかかる
テナント入居後も様々な対応が発生します。
例えば、
- エアコン故障
- 給湯器故障
- 洗濯機故障
- テレビ故障
- 鍵の紛失
- 水漏れ
などです。
日本では管理会社が対応することが一般的ですが、タイではオーナー自身が対応するケースも多くあります。
そのため海外在住オーナーにとっては大きな負担となります。
タイには賃貸管理会社が少ない
日本では賃貸管理会社を利用することが一般的です。
しかしタイでは、オーナー自身が管理する文化が根強く、日本のような賃貸管理サービスはそれほど普及していません。
特にタイ人オーナーの多くは、
- 募集
- 契約
- 修理手配
- 退去立会い
まで自ら行います。
一方で海外オーナーの場合、言語や距離の問題があるため、現地の賃貸管理会社を利用するケースが増えています。
この章のまとめ
タイの賃貸経営は、「物件を買ったら終わり」ではありません。
- 適正な家賃設定
- エージェントとの関係構築
- 家具家電の維持管理
- 入居者対応
- 退去時の原状回復
まで含めて考える必要があります。
特に海外オーナーの場合は、購入前から管理体制を整えておくことが、安定した賃貸経営への近道となります。





